■アルティメイトグリップチューンとは
このアルティメイトグリップチューンとは、従来のスキーエッジの常識を破り、エッジの表面に独特な凹凸加工を施したものである。
この凹凸加工は、スキーセンターからテール方向へ50〜60cm程度(加工対象スキー・ボードにより異なる)。ここにエッジ側面(滑走面に対し垂直面)にワンピッチ35mm、深さ約0.5mmの削り込みを行なう。ワンピッチのインターバルは15mm、ワンユニットは50mmとなる。従って50cm加工プロセスの場合、エッジ側面に10ユニット、計350mmにわたり、0.5mmセットバックしたエッジ面が構成される。これらの加工は専用のチューニングマシンにより行なわれる。
※1図
※2図
■アルティメイトグリップの理論的考察
まず、スキー(スノーボード)が雪面でターンする時、板は下の図(※3図)の様にたわみながらまわってゆく。この場合、エッジは雪面に食い込みながら雪を排除しつつまわってゆく。この時、摩擦抵抗と除雪抵抗のふたつが働く。
※3
図
では通常エッジとアルティメイトグリップチューンを施したエッジ(以下:UGエッジ)を比較してみよう。
通常エッジのスキーのサイド方向へのエッジングによる加重パターンは下図(※4図)のように推定される。
※4図
これに対して、アルティメイトのサイド方向へのエッジングによる加重パターンは下図(※5図)のようになる。濃い色の部分がアルティメイトグリップ加工によるグリップ増大部分である。
スキー板にかかる雪面抵抗は、ターンのようにエッジングしてスライドしてゆく時には除雪抵抗が主体となり、雪を削り排除しつつターンして行く。(※どんなに完全なカービングターンでも除雪抵抗は必ず存在する。)この時、弾性学的に雪を排除して行くプロセスでワンピッチ15/50であるから、30%の比率で突起したエッジの凸部分が雪面に接触し、凹部分が雪を逃がすことになる。必然的に凸部分の単位面積あたりの加重は強まる。
※5図
比較の為にエッジをフラットなものとして理想化し考えると通常エッジは※6図、UGエッジは※7図のようになる。
※6図 |
※7図 |
その結果ターン中、スキー(スノーボード)中央部のグリップ力が増大し、スキーヤーが任意に前後に加重をシフトすることで操作性を確保できる。通常エッジではカービングターン中加重分布パターンはスキーヤーの意志にかかわりなく、板の形状と角付角度とスピードで決まり、スキーヤーはドリフトコントロール時と異なりエッジ全体のバランスをうまく取る必要があった。しかし、UGエッジにより加重増大域がスキーセンターに集中することでそのコントロール性が安定するのである。
■アルティメイトグリップの効果
アルティメイトグリップチューンを施したものと施していない同一のスキーをテスターに使用させ、同一の斜面を中・高速で大中小様々なターンを滑走トライアルさせた場合、例外なく安定性、エッジコントロールの容易性、グリップの安定性が得られた。一言でいえばスキーヤーの技術・脚力に関係なくコントロールレスポンス向上の効果が見られる。例えていえばすり減った古いタイヤを新品の高性能タイヤに取り替えたような効果がある。
■結 論
アルティメイトグリップチューンによる効果は、スキー・スノーボード滑走時のグリップ操作性・安定性の向上を産み、スキーヤー・スノーボーダーが安全・快適に雪上を滑降することの一助になるものであるといえよう。
福岡孝純(Fukuoka Takazumi) 東京農業大学大学院教授 日本スキー指導者連盟 |